JAC 杉林孝法 ボーイズラブ文庫


「いやです。二度と、あなたに触られたくはありません」。

凌馬はひとり言のように呟くと、苦笑まじりに前髪をかき上げた。

心酔…。嘉瑞にとって無謀とも言えるこの案は、最後の防波堤だったのだ。すると炎十郎は、魅入られたような目で月を見つめていた。リアリーは、サーファの光り輝くような美貌に見とれてしまっていた。

「……」。「で、もうちょっと派手にすれば、さすがに智明も俺を頼ってくれるだろうと思ってたのに、それでも頼ってくれなかったから、最後の手段で襲われる智明を俺が助けて惚れ直させる作戦に打って出たんだぞ!この健(けな)気(げ)な男心をわかれよっ」。「可愛がってるぅぅ?一体どこが!?どこが可愛がってるって?」。――つまりは、桜庭が殺したも同然なのだ。「大きい声出すと、外に聞こえちゃうよ?」。「拳銃の撃ち方は多少の訓練を受けて、センスもいいようだが、体術に関しては、まったく女の子と一緒だ。その華奢な拳で相手を殴ったら、先に骨折するだろうな」。「新入りだ。今日から店の仕事を学ばせる」。

唇に指を触れながら、拓哉はさっきのことを思い出して目を瞬く。「今までは許してくれてたじゃないか。なのに、なんで今回だけダメなんだよ。これは誓ってもいいけど、本当にキスしかしてないんだぜ?しかも触れ合わせただけの軽い、お遊びみたいなやつだ。あんなので目くじら立てる必要ないって。もう絶対に何もしないって誓うから、そんなこと言うなよ。な?」。「そんなこと……」。パジャマのボタンを長い指に外され、ゆっくりと拓哉はベッドに押し倒された。「こんな所でしゃがんだら、腰が冷えるよ」。「誰かタイム計って、立会人になってくれる?コースはあれでいいのかな」。

拓哉の方はと・も・か・く・、自分の胸についている『キスマーク』はしがみつかれた指の跡だ。「くそっ……!」。


ボーイズラブ小説作品紹介


事故で両親を失い多額の賠償金を支払わなければならない望の前に、ひとりの男が現れた。彼は日比野家の弁護士・支倉と名乗り、望を引き取りたいと申し出たが、『日比野』とは母が逃げ出してきた実家のことだった。切実な金銭的事情により断ることもできず、日比野家に足を運んだ望は、そこで遥遼という美しい青年と出会う。とある事情から蔵の中に閉じこめられたままでいる遥遼に、望は次第に惹かれはじめて――。

タイトル:楽園までの距離
著 者 名:高月まつり
レーベル:アクア文庫
発 行 元:オークラ出版

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